アマテラスの岩戸伝説も伝わる戸隠神社

戸隠神社は、2000年以上の歴史があり、日本神話に出てくる岩戸伝説、平安時代の神仏習合と明治時代の神仏分離の影響を受けています。
伝承や宗教の歴史的背景を学びながら観光を楽しみましょう。

天照が隠れていた岩戸が飛んできた伝説

戸隠神社に伝えられる伝説はいくつかありますが、
中でも日本神話に登場する、岩戸伝説はご存知でしょうか。

岩戸伝説は天照(アマテラス)にまつわる逸話です。
概略を紹介します。登場する神様は戸隠神社に祀られているので、エピソードと合わせて覚えておいてください。
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昔々、イザナギが、アマテラスとスサノオ、ツクヨミと呼ばれる三貴子を産みました。
三貴子は、日本で最も貴い神様です。
アマテラスは太陽神として天を司り、スサノオは海を司り、ツクヨミは黄泉の国を司ることを命じられました。

しかし、海の統治をサボっていたスサノオは、親であるイザナギに追放され、姉であるアマテラスの元へ向かいました。

スサノオは、天の国でも暴れてしまい、その乱行に心を痛めたアマテラスが岩戸の洞窟に籠ってしまいました。
すると、世界は闇に包まれていき、悪いことが起こるようになりました。

それに困った神々は、アマテラスが岩屋から出てくるにはどうしたらいいか話し合い、岩屋の前で歌って踊って楽しそうにしていれば、気になって出てくるのではないかという案を、賢い神である天八意思兼命(あめのやごころおもいかねのみこと)が言いました。

案に基づき、岩屋の前で鶏を集めて鳴かせたり、手拍子を叩き、踊りの上手な神である天鈿女命(あめのうずめのみこと)が踊ったり、皆で笑ったりしました。

アマテラスは、外は真っ暗で困っているはずなのに、なぜ外で楽しそうなことが起きているのか気になり、岩戸をあけて外を覗きました。

その時に、力持ちの神である天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)が岩戸を持ち上げて、岩を下界の日本に投げ落としました。

アマテラスが岩屋から出ると、世の中は明るくなり平穏な日々が戻ったのだとか。
めでたしめでたし。
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日本に投げ落とされた岩戸が、戸隠に落ちてきたというのが岩戸伝説になります。
ちなみに、スサノオは天の国も追放され、次は出雲へ向かいやまたの大蛇を退治する伝説へ続いていきます。

岩戸伝説は、戸隠以外にも伝わっている伝承のため、諸説あると思ってください。
宮崎県には天岩戸神社があり、岩戸伝説に出てきた、アマテラスが隠れた洞窟はここにあるというも伝わっています。

もともとは顕光寺だった神仏習合時代

神社や寺の歴史を知る上で、度々登場してくる言葉が神仏習合です。
神仏習合とは、神道と仏教をひとくくりにまとめてしまおうという動きが奈良時代から平安時代にかけて進められました。

当時は、戸隠神社ではなく戸隠山顕光寺として、比叡山の延暦寺、高野山の金剛峯寺と共に「三千坊三山」と呼ばれるほど栄えていました。
三千坊三山とは、各寺に3,000人規模のお坊さんがいるという意味です。日本でも最大規模だと思ってください。

延暦寺と金剛峯寺はそれぞれ世界遺産にもなっております。記事もあるので合わせて読むと、より日本の宗教観の理解が深められます。

戸隠神社になった神仏分離

もともと顕光寺だったのが、戸隠神社に変わった理由が神仏分離にあります。

明治時代になると、神社と寺、神様と仏はきっちり分けた方がいいよねという動きになり、神仏分離令が出され、1000年以上続いていた神仏習合が禁止されていきました。

神仏分離は、神道を国教とする狙いがあったため、寺院にある神体は神社に返すことなど、神道を優遇するような制度でした。
拡大解釈した民衆は、寺院にある仏像や仏具を破壊していく動きも起きてしまいました。

ただ長い間、神仏習合が続いていたため、明確に分けることが難しく、寺院からの反感もあったことから、神道国境化の動きは放棄されました。
なので、未だに日本の国教はないというのが現状にあります。また、神道は宗教ではないというのも見解もあります。

歴史を知ると観光5倍楽しくなる

戸隠神社の見所は、奥社・中社・宝光社・九頭龍社・火之御子社の五社になります。

それぞれ、祀られている神様によって、祈る内容が異なります。
岩戸伝説に出てきた神様が祀られている3社を紹介します。

奥社

奥社には、岩戸伝説で登場した、天手力雄命(岩戸を投げた神)が祀られています。

参道が2kmと長く、歩いて片道40分ほどかかります。
参道の傍には水も流れていて、心地よい水音に癒されながら歩き進めます。
中間地点には隋神門という朱色の門があり、この付近から杉並木になっているので、神聖な気持ちにさせてくれます。

中社


アマテラスが岩屋から出てくる案を出した、天八意思兼命が祀られています。
賢い神様が祀られているので、学業の祈願をするのがおすすめです。

火之御子社

岩屋の前で踊った、天鈿女命が祀られています。
舞楽芸能に関することをお祈りするのがおすすめです。

最後に

戸隠神社は歴史が長いため、日本宗教の考え方の変化も感じることができます。
古事記にも出てくる神様に関する伝説にも関連しているので、古事記の上巻のあらすじを知ってから行くだけでも、よりお参りを楽しむことができます。

ちなみに、この地域で食べられる戸隠そばは、日本三大そばの一つでもあるので、訪れた際は食べていきましょう。