世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」を分かりやすく解説

紀伊山地の霊場と参詣道とは

紀伊山地の霊場と参詣道(きいさんちのれいじょうとさんけいみち)は、和歌山県、奈良県、三重県にまたがる、吉野・大峯、熊野三山、高野山の3つの霊場とその結ぶ参詣道を指します。熊野古道や那智大滝も構成資産に含まれています。

2004年に世界文化遺産に登録され、同時に「文化的景観」としても認められました。

文化的景観とは、「人間が自然と共に作り上げた景観」を指します。紀伊山地は古くから聖地として崇められたため、各霊場の神社や仏教寺院などの建造物と周辺の森林や滝といった自然環境とが一体となった景観を形成してます。

しかも、その景観が、1000年以上も保存されている点が評価され、日本で初めて、の文化的景観の登録に至りました。単なる「社寺と道」が登録されているのではなく、「山岳信仰の霊場と山岳修行の道」として、自然崇拝が重要のポイントと言えます。
日本の世界遺産で、他に文化的景観に登録されているのは、石見銀山含む「石見銀山遺跡とその文化的景観」のみになります。

紀伊山地を知るにあたって、「神仏習合(しんぶつしゅうごう)」という言葉は欠かせません。
神仏習合とは、その字の通り、神様と仏様を融合した考え方です。神道と仏教を融合するのは、他の国ではないので、日本独自の宗教観とも言えます。

日本古来の自然崇拝から生まれた神道と中国大陸から伝来した仏教が融合した聖地として、紀伊山地は崇められてきたのです。

紀伊山地の世界遺産の登録理由は?

世界遺産の登録基準のうち、以下の4つが評価されています。

Ⅱ.文化交流を証明する遺産

神仏習合は、東アジアの宗教文化の交流と発展の結果生まれた、他に類を見ない顕著な例です。

Ⅲ.文明や時代の証拠を示す遺産

豊富な考古学的文化財が残されており、今も宗教儀礼が行われるなど、宗教文化の継承の場をなっています。

Ⅳ.建築技術や科学技術の発展を証明する遺産

仏教建築や熊野三山の神社建築は木造宗教建築の代表例であり、価値は極めて高いです。

Ⅵ.人類の歴史上の出来事や伝統、宗教、芸術と関係する遺産

神道と仏教、修験道など、日本独自の信仰形態に関する顕著な例です。

世界遺産の登録基準の条件はこちらのにもまとめてますので、詳しく知りたい方はどうぞ。

世界遺産の正式名称が、あまり聞きなれない、有名な感じがしないのは何故でしょうか?

それは、複数の構成資産で登録された世界遺産だからです。
私自身、世界遺産検定の勉強をしていて、この正式名称を知ることとなりました。

他の世界遺産のように「姫路城」や「屋久島」と一つの建物や土地であれば、あーそれね。となりますが、16つの資産と3つの道を覚えようとする人は、世界遺産検定1級以上を勉強する人以外まずいません。

世界遺産に登録されている構成資産とは

構成資産は、吉野・大峯、熊野三山、高野山の3つの霊場とその結ぶ参詣道が登録されています。
また、和歌山県、奈良県、三重県にまたがる次の資産群となっています。

修験道の聖地 吉野・大峯

  • 吉野山(よしのやま)
  • 金峯山寺(きんぷせんじ)
  • 大峰山寺(おおみねさんじ)
  • 吉野水分神社(よしのみくまりじんじゃ)
  • 吉水神社(よしみずじんじゃ)
  • 金峯神社(きんぷじんじゃ)

神仏習合の地 熊野三山

  • 熊野本宮大社(くまのほんぐうたいしゃ)
  • 熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)
  • 熊野那智大社(くまのなちたいしゃ)
  • 青岸渡寺(せいがんとじ)
  • 那智大滝(なちのおおたき)
  • 那智原始林(なちげんしりん)
  • 補陀洛山寺(ほだらくさんじ)

真言密教が開かれた 高野山

  • 丹生都比売神社(にうつひめじんじゃ)
  • 金剛峯寺(こんごうぶじ)
  • 慈尊院(じそんいん)
  • 丹生官省符神社(にうかんしょうふじんじゃ)

神域へ至る修行の道 参詣道

  • 大峰奥駈道(おおみねおくがけみち)
  • 熊野参詣道(くまのさんけいみち)
  • 高野参詣道(こうやさんけいみち)

紀伊山地の見所

有名な神様がが祀られている熊野三山

熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社の総称を熊野三山と言います。

熊野本宮大社

熊野速玉大社

熊野那智大社

伊勢へ七度熊野へ三度」ということわざは聞いたことあるでしょうか。
これは、『東海道中膝栗毛』に出てきた一節で、信仰心が強いという意味があります。
伊勢神宮には、お伊勢参りで7社あり、熊野三山は、熊野詣で3社あることから、たびたび参るほど信仰が厚いことを指します。

熊野詣は江戸時代に庶民に人気で行列ができた様子から、「蟻の熊野詣」とも呼ばれました。

熊野三山に祀られているのは、それぞれ素戔嗚尊(すさのおのみこと)、伊邪那岐(いざなぎ)、伊邪那美(いざなみ)の3つの神様です。

誰もが一度は紀伊いたことがある、日本神話に出てくる有名な神様です。
それだけで、熊野三山が日本にとって重要な地であることを感じます。

神聖な那智大滝

日本三名爆の一つにも数えられる滝で、熊野那智大社からの光景は絶景です。

真言密教の霊場、金剛峯寺

真言宗の総本山で、高野山自体がお寺と考える「一山境内地」が根付いています。